糖尿病
糖尿病とは?
糖尿病は代表的な生活習慣病の一つで血液中のブドウ糖(血糖)濃度が慢性的に高くなる代謝疾患です。通常、体内では膵臓から分泌されるインスリンというホルモンが、血糖値を適切に調整する役割を果たしています。しかし、糖尿病ではこのインスリンの働きが不足、あるいは体がインスリンに対して抵抗性を持つことで、血糖値のコントロールが困難になります。
・1型糖尿病:主に若年層で発症し、膵臓のβ細胞が破壊されてインスリンがほとんど分泌されなくなる自己免疫疾患です。
・2型糖尿病:最も一般的な型で、インスリンの分泌不全や、インスリン抵抗性により発症します。生活習慣と密接に関連しています。
・妊娠糖尿病:妊娠中に初めて発見または発症する糖尿病で、出産後に改善することが多いですが、将来的に2型糖尿病を発症するリスクが高まります。
糖尿病の原因は?
糖尿病、特に2型糖尿病の発症には、遺伝的要因と環境要因の両方が関与しています。主な危険因子には以下のようなものがあります。
1.遺伝的素因
2.肥満
3.運動不足
4.不健康な食生活
5.歯周病
6.ストレス
7.睡眠不足
8.喫煙
糖尿病の症状は?
初期の糖尿病では、明確な症状が現れないことも多いとされています。しかし、血糖値が高い状態が続くと、以下のような症状が現れることがあります:
・口渇感・多飲
・多尿
・体重減少
・疲労感
・視力の低下
・傷の治りが遅い
・皮膚の乾燥やかゆみ
これらの症状に気づいた場合は、早めに医療機関を受診することが重要です。
糖尿病の合併症は?
糖尿病を適切に管理しないと、様々な合併症のリスクが高まります。主な合併症には以下のように血管障害とその他で分類ができます。
細小血管合併症
・糖尿病性神経障害:手足のしびれや痛み、自律神経の障害などを引き起こします。
・糖尿病性腎症:腎臓の機能が低下し、最終的に人工透析が必要になる可能性があります。
・糖尿病性網膜症:網膜の血管が障害され、視力低下や失明の原因となります。
大血管合併症
・心筋梗塞:冠動脈の動脈硬化により、心臓の血流が遮断される深刻な状態です。
・脳梗塞:脳の血管が詰まり、脳組織が壊死する状態で、後遺症が残る可能性があります。
・末梢動脈疾患:手足の血流が悪くなり、重症の場合は切断が必要になることもあります。
その他の合併症
・糖尿病性足病変:神経障害と血流障害により、足に潰瘍ができやすくなります。
・感染症リスクの上昇:高血糖状態が続くと、免疫機能が低下し、感染症にかかりやすくなります。
・認知症:糖尿病患者は認知症のリスクが高まるとされています。
これらの合併症を予防するためには、早期発見・早期治療と、適切な血糖コントロールが不可欠です。
糖尿病の予防は?
糖尿病、特に2型糖尿病は、生活習慣の改善によって予防や進行の遅延が可能です。特に以下の点に気をつけましょう。
1.食生活の改善
・規則正しい食生活
・バランスの取れた食事を心がける
・食物繊維を多く含む食品を積極的に摂取する
・糖質や脂肪の過剰摂取を避ける
2.定期的な運動(有酸素運動・筋力トレーニング)
3.適正体重の維持
4.ストレス管理、十分な睡眠時間の確保
5.定期的な健康診断
6.禁煙
これらの生活習慣の改善は、糖尿病だけでなく、他の生活習慣病の予防にも効果的です。
糖尿病の治療は?
糖尿病の治療目標は、血糖値を正常に近い状態に保ち、合併症の発症や進行を防ぐことです。
・食事療法:バランスの取れた食事と、適切なカロリー管理が重要です。
・運動療法:定期的な運動は、インスリンの感受性を高め、血糖コントロールに効果的です。
・薬物療法:生活習慣の改善が基本となりますが、それだけでは血糖コントロールが困難な場合に薬物療法が行われます。
1. 経口血糖降下薬
・ビグアナイド薬:メトホルミン、ブホルミン
・チアゾリジン薬:ピオグリタゾン
・α-グルコシダーゼ阻害薬:ボグリボース、ミグリトール
・スルホニル尿素(SU)薬:グリメピリド
・速効型インスリン分泌促進薬:ミチグリニド
・DPP-4阻害薬:シタグリプチン、オマリグリプチン
・SGLT2阻害薬:ダパグリフロジン、エンパグリフロジン
・GLP-1受容体作動薬:リラグルチド、デュラグルチド、セマグルチド
・ミトコンドリア機能改善薬:イメグリミン
2.インスリン製剤:インスリンリスプロ、インスリングラルギン
これらの薬剤は、患者の状態や病態に応じて、単剤または併用で使用されます。
メタボリックシンドロームとは?
メタボリックシンドロームは、内臓脂肪型肥満を基盤とし、高血糖、高血圧、脂質異常症のうち2つ以上を合併した状態と定義されます。糖尿病(特に2型糖尿病)とメタボリックシンドロームは密接に関連しており、以下のような特徴があります。
・インスリン抵抗性:内臓脂肪の蓄積はインスリン抵抗性を引き起こし、糖尿病の発症リスクを高めます。
・慢性炎症:脂肪細胞から分泌される炎症性物質が、インスリンの働きを妨げます。
・酸化ストレス:活性酸素の増加が、細胞のインスリン受容体の機能を低下させます。
・動脈硬化の促進:高血糖、高血圧、脂質異常症が重なることで、動脈硬化が加速します。
メタボリックシンドロームの予防と改善は、糖尿病の予防にもつながります。具体的には、適切な食事管理、定期的な運動、ストレス管理、禁煙などが効果的です。
糖尿病は深刻な合併症を引き起こす可能性のある慢性疾患ですが、適切な管理と生活習慣の改善により、その発症や進行を予防することが可能です。早期発見・早期治療が重要であり、定期的な健康診断を受けることをお勧めします。
また、糖尿病はメタボリックシンドロームと密接に関連しているため、総合的な健康管理が必要です。バランスの取れた食事、定期的な運動、適正体重の維持など、日々の小さな努力の積み重ねが、健康な未来につながります。
糖尿病についてお悩みの方、また栄養指導も行っておりますので食事、栄養についてお悩みの方もぜひ当院にご相談ください。